カタルーニャの道 Camino Catalán por San Juan de la Peña

中世のサンティアゴ巡礼路ではヨーロッパ各地からの道が歩かれていましたが、フランスからの主要なルートであるアルルの道Chemin d’ArlesはアルルArlesからモンペリエMontpellier、トゥールーズToulouse、ソンポルト峠Col de Somportを経てフランス人の道へ合流しています。(この道はサン・ジルの道 Saint Gilles又はVia Tolosanaとも呼ばれています。)
当時の巡礼者は途中の主要な教会・修道院等へて巡礼を行っていましたがスペイン南東部のモンセラット修道院(Abadia de Montserrat)は9世紀の大聖堂創設以来キリスト教の主要な修道院であり12世紀”黒いマリア像”が発見されたことから多くの巡礼者が訪れる事になりました。
この為、アルルの道Chemin d’ArlesのモンペリエMontpellierからフィゲラスFigueres、ジローナGironaを経てモンセラットMontserratへ至り、レリダLérida、サラゴサZaragozaを通ってフランス人の道Camino FrancésのログローニョLogroñoへ合流する道を歩く巡礼者が多くなりました。
この巡礼路がカタルーニャの道サラゴサ経由の道Camino Catalán por Zaragozaと呼ばれています。なお、バレンシア州に近いトゥルトーザTortosaからサラゴサZaragoza経由の道もあり、エブロ河(Rio Ebro)に沿っていることからエルボの道Camino del ErboがサラゴサZaragozaの手前で合流しています。この為、全体をエルボの道Camino del Erboとして紹介しているガイドブックもあります。またモンセラット修道院を出発してタレガTárregaの街から北へ向かいウエスカHuescaを経てアラゴン州のサン・ファン・デ・ラ・ペーニャ修道院を通るルートも同様に歩かれていました。この巡礼路がサン・ファン・デ・ラ・ペーニャ経由のカタルーニャの道Camino Catalán por San Juan de la Peñaと言います。
モンセラットMontserratからアラゴンの道Camino Aragnësのサンタ・シシア・デ・ハカ Santa Cilia de Jacaまで約325Kmです。

巡礼路の概要

(1)モンセラットMontserratからモンソンMonzón
モンセラット修道院(Abadia de Montserrat)はバルセロナから日帰りで行ける人気の観光地で標高1,241mのモンセラット山の中腹にあります。奇形な岩山に囲まれて建つモンセラット修道院は黒いマリア像や、世界的レベルの少年聖歌隊のミサでも有名です。モンセラット修道院まではケーブルカー等がありますが麓の鉄道駅からトレッキングコース(GR-5)として整備されていますので歩いて登ることが出来ます。修道院内にはアルベルゲもあり観光客が下山した後の静寂さを味わう事が出来ます。
修道院の裏手から歩き始めサンタ・セシリアSanta Cesiliaの教会を経てモンセラット山を下りイグアラダIguaradaへ向かいます。巡礼路はパナディージャLa Panadellaまで道路沿いですがやがて小高い丘にセルベラCerveraの村が見えてきます。この街は8月の最終土曜日にAquelarre(魔女の安息日)と言う火・魔女・悪魔のお祭りが開催されています。街の西側に立つカテドラル(La Igresia de Santa Maria)もロマネスク様式のファサードや黒いマリア象などが見所です。タラガTárragaの街に着いてサラゴサ経由の道とサン・ファン・デ・ラ・ペーニャへ向かう巡礼路が分かれます。この付近から巡礼路にはリンゴ畑、ナシ等の果樹園や素晴らしいブドウ畑とワインの醸造所なども見られます。リンヨラLinyolaの街を過ぎセグラ河(Riu Segre)を渡って歩くと山の上にローマ時代の要塞であったカスティージョ・デ・ファンタヤCastelló de Fantayaの城が見えますが現在は廃墟の遺跡になっています。やがて水道橋の運河(Canal Aragon Catarunya)の下を通るとカタルーニャCatarunya州からウエスカHuesca州に入りモンソンMonzónの街へ向かいます。モンソンMonzónにはイスラムが建設し後にテンプル騎士団の使用したモンソン城(Castillo de Monzón)があります。

朝のモンセラット山
セベラCeveraの街

(2)モンソンMonzónからサンタ・シシア・デ・ハカ Santa Cilia de Jaca
モンソンMonzónから暫く歩きSelguaの村を出るとベルべガルBerbegalまで巡礼路が不鮮明な為、道路(A-1223)事をお勧めします。ベルべガルBerbegalから運河(Canal de Pertusa)沿いの舗装道路を歩きアンティジョンAntillonからプエヨ・デ・ファナナスPueyo de Fañanásの村へ向かいますがこの付近も巡礼路が不明確で注意が必要です。
プエヨ・デ・フナニャスPueyo de Fañanásの村にはアルベルゲがありますがバルや商店もありませんのでアルベルゲの管理人へ連絡して状況を確認する事が必要です。ここから巡礼路はやや農道を登り高台のAlto de Sasoに着くと急に前方が開けウエスカHuescaの街を見下ろす事が出来ます。
ウエスカHuescaはウエスカ県(Provincia de Huesca)の県都でローマ帝国時代からの古都ですが1096年にペドロⅠ世がイスラムの支配から征服しました。市内のカテドラル(Catedral-Museo Diocesano)は13世紀から16世紀のゴシック建築ですが、教会(Igresia y Caustro de San Pedro el Viejo)は12世紀のロマネスク様式です。アルベルゲはありますが市内からやや離れており、モンセラットMontserratから約10日でこの先も大きな都市はありませんので休養に良い都市です。
ウエスカHuescaを過ぎると前方に山々が見え高原状の巡礼路になりボレアBoleaを経てアニエスAniésへ向かいますがこの近辺もハイキングコース(GR10/GR15)が交差しており標識に注意が必要です。この先のアルベルゲのあるサルサマルクエリョSarsamarcuelloには商店がありませんので、ロアレLoarreの村である程度の食料は購入しておくことが必要です。(サルサマルクエリョSarsamarcuelloのバルには飲み物しかありませんでした。)
サルサマルクエリョSarsamarcuelloから急な登りになりサン・ミゲル僧院Ermita de San Miguelから峠を越えてスペイン鉄道のペーニャ駅Estación de Peñaまで下ります。駅前にバルとパン屋があり次のアルベルゲのあるエナEnaもバルや商店がありませんのでここで購入して下さい。ここからは山道でエナEnaのアルベルゲ迄は約10Kmの登りになります。
エナEnaから暫く林道ですがやがて山道になり新しい修道院の公園に着きます。新しい修道院でクレデンシャルのスタンプを貰いサン・ファン・デ・ラ・ペーニャ修道院(Monasterio de la San Juan de la Peña)まで下ります。修道院は岸壁にあり回廊彫刻は見事です。十分に見学したらアラゴンの道Camino Aragnësのサンタ・シシア・デ・ハカ Santa Cilia de Jacaまで下ります。

ウエスカHuescaの大聖堂
サン・ファン・デ・ラ・ペーニャ修道院の回廊彫刻



カタルーニャの道 Camino Catalánの地図

出展:Gronze.com

標高図 :

出展:

3.宿泊設備、交通事情

(1)宿泊設備
宿泊設備は下記のサイトに記載されています。
Gronze.com   Mundicamino
下記で宿泊設備のリストを公開しています。
Hoja de los servicios del Camino Catalán por San Juan de la Peña

(2)交通事情
出発地のモンセラットMontserratはバルセロナのスペイン広場(Placa Espanya)駅からカタルーニャ鉄道 R5線で約1時間で麓の駅へ行き登山電車またはロープウェイで登ります。
アラゴンの道Camino Aragnësのサンタ・シシア・デ・ハカ Santa Cilia de Jacaからはプエンテ・ラ・レイナPuente la Reinaまで歩くかハカJacaへ戻れば列車又はバスでマドリードMadridで戻れます。

3.歩いた行程表

私が歩いた行程表です。<PDF>

4.巡礼路の全体的な印象

(1)アルベルゲ等の宿泊設備について
近年各地にアルベルゲが整備されて新しくなっています。然しながら丁度良い距離の区間(Etapa)にアルベルゲが無い街や村があります。また、アルベルゲは全て通常はカギがかかっており最寄りの管理者に連絡してカギを借りる必要があります。この為に事前に連絡する事が必要でありスペイン国内用の電話を持っていると便利です。
(2)後半の区間に標高差が大きい
モンセラットMontserratを下りパナデージャLa Pandellaを過ぎるとウエスカHuescaまでは比較的標高差も無く平坦ですが後半の3日間は標高差の大きい山道になります。この区間は整備された道ではなくハイキング道の様な道になりますので荒天の際は注意が必要です。
(3) 道標は整備されているが国内の別ルートとの標識に注意。
スペイン国内ではサンティアゴ巡礼路の他に多くのハイキングコースや自転車道が整備されています。この為フランス人の道(Camino Frances)の様に専用の標識は少なく多くは他のハイキングコースと同様の標識になっています。サンティアゴ巡礼路の標識にはカタルーニャ語で「Camí de Saint Jaume」と記載されています。黄色い矢印も所々にありましたが、他のルートにも黄色い矢印がある個所もあり注意が必要です。
(4)アルベルゲのある村にバル(Bar)や商店(Tienda)が無い個所がある。
後半のサルサマルクエジョSarsamarcuelloとエナEnaにはバル(Bar)や商店(Tienda)がありません。
従ってボレアBoleaを出てロアーレLoarreの村で必要な食料を購入して持参する必要があります。エナEnaへの途中のエスタシオン・デ・サンタ・マリア・イ・ペーニャEstación de Santa Maria y PeñaにバルBarとパン屋(Panaderia:月曜日休み)がありますが開いていない場合もあるとの事で最悪は2日間分を考慮する必要があります。
プエヨ・デ・ファニャナスPueyo de Fañanásにもバル(Bar)、商店(Tienda)がありませんがアルベルゲの管理者がパンと冷凍食品を売ってくれましたが事前に確認した方が良いでしょう。

5. ガイドブック

現在、カタルーニャの道Camino Catalánの日本で購入可能なガイドブックは下記です。
(随時、改定されていますので最新版にご注意下さい。)


  書名:Camino Catalán. The Tranquil Route Towards Santiago De Compostela Broché (英語版)
著者:Callum J. Christie
ISBN:978-8412188059
価格 :¥4,853 (2021/3/1版)
Amazon.jpで購入できます。(スペイン語版もあります。)
下記から商品へリンクします。


Camino Catalan: The Tranquil Route Towards Santiago de Compstela