1.Camino de Santiago(サンティアゴ巡礼路とは)

El Camino de Santiago (サンティアゴ巡礼路)は、スペインのGalicia地方に位置するSantiago de Compostela (サンティアゴ・デ・コンポステーラ)に向かう巡礼路であり、エルサレム・ローマに並ぶキリスト教の3大巡礼路として中世から多くの巡礼者が歩いてきました。 Santiago de Compostelaのカテドラル(大聖堂)にはキリストの弟子である聖ヤコブの遺骸が埋葬されており、この遺骸に礼拝するための聖地巡礼の旅がサンチャゴ巡礼です。

聖ヤコブの遺骸は9世紀初頭に発見されましたが、当時この地域がイスラム軍の侵攻をを受けており政治的に不安定な辺境のガリシア地域を当時のキリスト教国であったアストウーリアス王国を民衆信仰でつなぎ止める目的もあったと言われています。発見当時はガリシア地方に限定されていたサンチャゴ巡礼は11世紀から13世紀に最盛期を迎えて巡礼者は年間20~50万であったとされています。

宗教改革期の16世紀以降には聖人崇拝や巡礼が禁止されたこともあり巡礼者数は大きく減少する事となり、サンティアゴ教会がイギリス海軍の略奪を恐れて聖ヤコブの遺骸を隠匿し、隠し場所が不明確になり聖地巡礼が大きな転換期となりました。1879年に聖ヤコブの遺骸がサンティアゴ教会によって再発見されましたが、ヨーロッパやスペインの政治情勢もあり本格的にサンティアゴ巡礼が復活・活性化してきたのは1980年代以降となっています。 中世以降に多くの人が巡礼をする理由として第一にキリスト教への信仰心であり、巡礼路の教会へ立ち寄り精神を浄化させ聖ヤコブの遺骸に触れて罪の許しと天国へ行ける様に願っていました。また病気治癒の奇跡を求めて巡礼を行う人も多く当時は各地に施療院(Hospital)が存在しました。

第二には自分の地位確保、または立身出世のため各地の王や領主、騎士がサンティアゴ教会に加護を求めて巡礼を行っています。 第三には観光と娯楽の目的もあったと言われています。 現代では信仰目的の人も多いのですが自分の健康と体験のため、また人生の区切りとして歩く人が多いと思われます。 サンティアゴ巡礼路は1993年にUNESCOの世界遺産に登録され、年々巡礼者の数も増加しています。 また、聖ヤコブの日(7月25日)が日曜日となる聖年にはサンティアゴ大聖堂の栄光の門が開かれる為、前回の聖ヤコブ年の2010年には年間で28万人の記録的な巡礼者で賑わいました。しかしながらその後も巡礼者は増加し2019年は年間で347,000人となっています。
2021年は聖年でしたが2019年春からの新型コロナ感染の影響で巡礼路は閉鎖されていた期間もあり巡礼者は激減しました。このため聖年は2022年まで継続し、2022年は年間の巡礼者数が438,00人を超えて復活しています。

出展:Gronze.com

2.私の歩いた巡礼路

私がサンティアゴ巡礼路に興味を持ったのは、NHKのドキュメンタリーでした。各国からの巡礼者がそれぞれの目的で1ヶ月以上の巡礼路を歩く姿に私にも出来るかと、ガイドブックやインターネットのサイトを見て調べておりましたが2008年9、10月に念願のCamino Francés(フランス人の道)をフランスのルルド(Loudes)からフィステラ岬(Fisterra)までを歩くことが出来ました。
その後、日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会のお手伝いをしていましたが多くの方の情熱に自分自身もモチベーションを維持すると共に別なルートを歩いてみたい思いが強くなり、その後の11年間に下記の道を歩いています。
2011年4,5月:Via de la Plata(銀の道)Sevilla(セビージャ)からサンティアゴへ
2013年5,6月:Camino del Norte(北の道) ビアリッツ(Biaritz)からサンティアゴへ
2014年5,6月:Chmin d’Arles(アルルの道) オーシュ(Auch)からソンポルト峠へ
Camino Aragonés(アラゴンの道)ソンポルト峠からプエンテ・ラ・レイナ(Puente la Reina)へ
Camino Primitivo(プリミティボの道)ビジャビシオーサ(Villaviciosa)からサンティアゴへ
2015年9,10月;Camino Catalán(カタルーニャの道) マンレサ(Manresa)からサングエッサ(Sanguesa)
Camino Inglés(イギリス人の道)フェロール(Ferrol)からサンティアゴへ
2016年9,10月;Camino Vasco del interior(バスクの道)イルン(Irun)からブルゴス(Burgos)へ
Camino de Madrid(マドリードの道)マドリード(Madrid)からサアグン(Sahagún)へ
2017年10月 :Camino Portugués(ポルトガルの道)コインブラ(Coimbra)からサンティアゴへ
2018年10月 :Camino Mozarábe(モサラベの道)グラナダ(Granada)からメリダ(Merída)へ 
2019年10月 :Camino Ignaciano(イグナシオ・ロヨラの道)マンレサ(Manresa)からロヨラ(Loyola)
2022年10月 :Camino de Levante(レバンテの道)サン・クレメンテ(San Clemente)からトレド(Toledo)
2023年10月 :Camino Primitivo(プリミティボの道)オビエド(Oviedo)からルーゴ(Lugo)

サンティアゴ巡礼路を歩く巡礼者は年々増加し、我々退職者年代は基より若い方も多くなっています。また、歩く動機(Motivo)も宗教(Rergion)より文化(Curtula)や個人(Personal)的な動機とする方が増加し、スタート地点も歩き方も様々な 形態になっています。
私も最初は定年と言う人生の節目に何かしたいと考えて歩きましたが、スペインの自然とCaminoの鮮烈な印象を忘れることが出来ず、すっかりこの魅力に入り込んでしまい毎年の様に歩き続けて総歩行距離は6,500Kmを超えました。
Camino Francesは歩いた経験者も多く、情報も豊富ですが、北の道(Camino del Norte)や銀の道(Via dela Plata)等、フランス人の道から離れると全く状況が異なり一日の行程も長く道標やアルベルゲも少ない等、厳しい環境となりますが反面静かな巡礼路を歩くことが出来ます。

このホームページは私の「サンティアゴ巡礼の記録」で掲載していた内容を修正して転載しました。
各行程の詳細な日誌については「サンティアゴ巡礼の記録」を参照して下さい。

私の歩いた時の状況と感想ですので季節やその後の巡礼路の状況変化で変わっている事もご了解ください。フランス人の道を歩かれた方が次にどこを歩こうかと考える際に、この記録が参考になれば幸いです。

2024年1月5日 (Rev.8.2)