1. イグナチオ・ロヨラの道 Camino Ignaciano

イグナチオ・ロヨラの道Camino Ignacianoはバスク自治州のギプスコアGipzkoa県にあるロヨラLoyolaからカタルーニャ州のマンレサManresaまでの約672Kmの巡礼路です。
イグナチオ・デ・ロヨラ(Ignacio López de Loyola)は1491年にバスク自治州のロヨラ城で生まれ、軍隊生活で負傷して療養後に修道生活に入りました。1522年3月25日にロヨラLoyolaからモンセラート修道院(Monasterio de Montserrat)まで歩いて訪れ、そこで世俗的な生活に決別してカタルーニャ―州のマンレザManresaにある洞窟の中にこもって黙想の時を過ごしました。故郷へ戻ってからも何度かモンセラート修道院を訪れました。このイグナチオ・ロヨラがマンレサManresaまで歩いた巡礼路をイグナチオ・ロヨラの道Camino Ignacianoと呼んでいます。
モンセラットMontserratからログローニョLogroñoまではエブロ河(Rio Ebro)流域を通るサンティアゴ巡礼路のエブロの道Camino del Ebroとして従来から歩かれており、バスクの区間もGR120としてハイキングコースになっていましたが、近年にこのルートがイグナチオ・ロヨラの道Camino Ignacianoとして整備されました。
2020年がイグナチオ・ロヨラが歩いてから500周年となる為に聖年として祝う事になり、この道を歩く巡礼者も増加しています。

2. 巡礼証明書とクレデンシャル

イグナシオ・ロヨラの道Camino Ignacianoでは独自のクレデンシャルがあり、巡礼の達成すると巡礼証明書を貰うことが出来ます。クレデンシャルは及び巡礼証明書はそれぞれの起点、終点の巡礼事務所で貰うことが出来ます。

   
    巡礼証明書(Compostela)
クレデンシャル(Credencial)

3. 巡礼路の概要

以下の概要はマンレザManresaからロヨラLoyolaへの内容で記載します。
(1)マンレザManresaからサラゴサZaragoza
マンレザManresaの市内にイグナチオ・デ・ロヨラ洞窟(La Cueva de San Ignacio)や博物館(Museo Comarcal)がありクレデンシャルにスタンプを貰って出発します。サント・クリストフォルSant Cristófolの村を過ぎると前方にモンセラットの岩峰が見えてきます。巡礼路は直接にサンタ・セシリア修道院Monastir Santa Cecillaへ登るルートがありますが道路(BP-1122)を登って行く事も出来ます。長い自動車道路の登りでやや疲れた頃にモンセラット修道院(Monistrol de Montserra)の広場に着きます。アルベルゲの手続きをして修道院内を見学して夕方(19:00)の少年聖歌隊のミサが終わると観光客はいなくなり静寂が訪れます。
翌日はイグアラダgualadaへ下りセベラCeveraからタレガTarregaまではカタルーニャの道Camino Cataluña por San juan del la Peñaの道と同様です。
カステジョノウ・デ・セアナCastellnou de Seana付近ではリンゴ畑も多く農道の巡礼路を気分良くあるく事が出来、セグレ河(Rio Segre)の橋を渡ってジェイダLleidaへ着きます。ジェイダLleidaはカタルーニャ州でも古い都市でジェイダ県の県都でもあり市内の高台に大聖堂(Catedral Seu Vella)が建ち市内も賑やかな街です。ジェイダLleidaから高速道路を離れてカミ・リアルami Realの村を過ぎるとやや高原状の台地になり運河(Canal de Aragon)を渡ってフラガFurgaの街へ下ります。フラガFurgaからカンダスノスCandasnos迄は26Kmあり宿泊設備も無いのでバスでフラガFurgaへ戻り、翌日はカンダスノスCandasnosからブハラロスBujaralozへ向かうのも良い方法です。フラガFurgaからカンダスノスCandasnos間では巡礼路の中間にバルが併設したガソリンスタンドがあり休憩出来ます。
さらにブハラロスBujaralozから21Km先の次の行程になるベンタ・デ・サンタ・ルシア(Venta de Santa Lucia)も宿泊設備は無くブハラロスBujaralozへ戻るか約18Km先のピーニャ・デ・エブロPiña de Ebroまで歩く事になります。この付近はアップダウンは無く全くの荒野で天候の悪い日には厳しい区間になるかと思います。
ピーニャ・デ・エブロPiña de Ebroの村は中心部を通らず街を抜けるとエブロ河(Rio Ebro)があり畑の中からRenfeの線路沿いになってフエンテス・デ・エブロFuentes de Ebroの街に着きます。ここからエブロ河沿いに歩いていくとやがてサラゴサZaragozaの大聖堂(Basílica de Nuestra Señora del Pilar de Zaragoza)の塔が見えてきて市内へ入ります。サラゴサZaragozaの大聖堂には聖母ピラール(Nuestra Señora del Pilar )がまつられ10月のエル・ピラールの聖母祭(Fiesta de Piral)は盛大です。
大聖堂前に観光案内所がありスタンプを貰い一日の休養を兼ねて市内観光をお勧めします。

 
ジェイダLleidaの大聖堂
荒野の巡礼路



(2)サラゴサZaragozaからログローニョLogroño
サラゴサZaragozaを出ると巡礼路は中盤のログローニョLogroñoのまでの行程が始まります。市街地を抜けてソブラディエルSobradielの村へ着くと公園に教会(Santiago Apóstal)があり正面にサンティアゴヤコブ像がありますので見逃せません。
アラゴンAlagónの街にもアルベルゲは無く市内の中心部の教会(Igresia San Antonio de Padua)の事務所でスタンプが貰えます。
次の街のガジュルGallurはガイドブックにアルベルゲがある事になっていましたが閉鎖(2019年)されておりマジェンMallénまで歩くと新しい設備のアルベルゲが開設されています。
トゥデラTudela迄の途中は約2時間線路沿いを歩く事になりますがバフォラーダRibaforadaの村からは運河(Canal Imperial)沿いの快適な道になります。トゥデラTudelaの街はナバラ州でも2番目に大きな都市でエブロ河沿いの戦略的に重要な都市でったとの事で聖マリア大聖堂(La Catedral de Santa Maria de Tudela)のファサードなど歴史的な建築も多く見どころのある街です。
エブロ河沿いの農道を歩きカステフォンCastejónの村を過ぎればリオハ州に入りアルファロAlfaroですがここにはアルファロ友の会が運営する家庭的なアルベルゲがあり是非利用されることをお勧めします。
アルファロAlfaroからはさすがリオハ州を思わせるブドウ畑が広がっています。やがてカラオラCalahorraの街へ着きますがここのアルベルゲはレストランと併設のホテルの様な設備でしたが、この街も旧市街はトゥデラTudelaと同様に歴史を感じる美しい市内でした。次の21Km先の行程となるアルカナドレAlcanadreの村のアルベルゲも閉鎖されてアルバルArrúbalまでは34Kmありますので注意が必要です。アルバルArrúbalの村を出て1時間程度でアゴンシージョAgoncilloの村に着きます。この村には小さな村ですがアグアスマンサスの城(Castillo de Aguas Mansas)があります。ここから国道(N-232)及び高速道路(AP-68)沿いの道になり軍用のログローニョ空港を見下ろして歩いていけばログローニョLogroñoのピエドラ橋(Puente de Piedra)の所でフランス人の道Camino Francesと交差して市内に着きます。

 
ソブラディエルのサンティアゴ教会
エブロ河沿いの道



(2)ログローニョLogroñoからロヨラLoyola
ログローニョLogroñoからラガーディアLaguardia間はガイドブックではフランス人の道Camino FrancésのナバレッテNavarrete経由になっていますがログローニョLogroñoからエブロ河(Rio Ebro)沿いにLogroñoの街の北側を回りラ・エスタシオンLa Estaciónの村で巡礼路に合流するハイキングコースを取る事出来ます。ラ・エスタシオンLa Estaciónからエブロ河を渡るとバスク州に入り巡礼路はラガーディアLaguardiaまで緩やかな登り坂になります。ラガーディアLaguardiaは城壁に囲まれた歴史的な街で教会(Iglesia de Santa María de los Reyes)もガイドツアーを行っており大勢の観光客が来ています。
この街からロヨラLoyolaまで大きな都市はありません。クリパンKripanまで登ると前方に岸壁が見えラポブラシオンLapoblaciónまで標高差約400mを登る事になります。道路(NA-7211)に着くと1時間程度緩やかに下り道路から離れて急な山道をヘネビジャGenevillaまで下ります。
ヘネビジャGenevillaにはホスタルがありますがバルやレストランは5km先のサンタ・クルス・デ・カンペソSanta Cruz de Campezoまで歩く必要があります。ラガーディアLaguardiaからヘネビジャGenevilla間は約27Kmあり逆コースではかなり登りも厳しい区間になります。サンタ・クルス・デ・カンペソSanta Cruz de CampezoからアルダAldaはアントニャーナAntoñana経由かオルビソOrbiso経由の山越えのルートがありますが一般的には前者のルートで歩かれています。
アルダAldaにはアルベルゲは無くCasa Ruralが1軒のみで商店もありませんので翌日の食料などはサン・ビセンテ・デ・アラナSan Vicente de Aranaのバルで購入する必要があります。アルダAldaから3日間はバスクの山越えになります。
アルダAldaから一旦登って高原状の台地を歩き鉄道(Renfe)の駅を通ってアライアAraiaの村へ向かいます。ここからアランサスArantzazuはバスクの山越えになり最高のハイライト区間です。林道終点から山道を登るとバスクの道Camino Vascoのサン・アドリアン・トンネル(Tunel de San Adorian)との分岐がありやがて広々した草原の道になり周囲の山が見事な岩山です。夏には牧場になり多くの牛が村から上がって来ています。牧場には休憩所のある小屋もあり周囲の景観を楽しんだらアランサスArantzazuへ下ります。
アランサスArantzazuには海抜750mの急峻な崖に修道院(Santuario de Nuestra Señora de Aránzaz)があり大聖堂は石造りで地下のクリプトの壁画は見事です。修道院に併設した宿泊施設もあり巡礼者も利用可能です。ここからスマラガZumarragaまでプエルト・デ・ビオスコルニア (Puerto de Biozkornia)へ登ってから一気に下りになります。スマラガZumarragaから廃線跡を遊歩道になった快適な道にを歩き静かな農村の中に聖堂のドームが見えロヨラ聖域(Santuario de Loyola)に入って大聖堂の前へ出ます。長かった巡礼も終り事務所で巡礼証明書を受け取りましょう。

 
バスクの山々
アランサスの修道院



イグナシオ・ロヨラの道Camino Ignacianoの地図

出展:Ayuntamiento Navarrete https://www.navarrete.es/turismo/camino-de-santiago-ignaciano/camino-ignaciano/

標高図 :ロヨラLoyolaからマンレザManresa

出展:El Camino Ignaciano https://caminoignaciano.org/el-camino-ignaciano/

4.宿泊設備、交通事情

(1)宿泊設備
モンセラットMontserraからログローニョLogroñoは下記のサイトでカタルーニャの道Camino Catalán por Zaragoza及びエブロの道Camino del Ebroが下記のサイトに記載されています。
Gronze.com   Mundicamino
その他は下記のサイトを参照下さい。
Camino Ignaciano Alojamiento

(2)交通事情
・マンレサmanresaはバルセロナのスペイン広場(Placa Espanya)駅からカタルーニャ鉄道 R5線で約1時間です。
・ロヨラLoyolaはビルバオBilbao又はサン・セバスティアンSan Sebastianから列車RenfeでスマラガZumárragaへ行きバスでロヨラ大聖堂まで行く事が出来ます。又はサン・セバスティアンSan Sebastianから直通のバスも運行しています。

3.歩いた行程表

私が歩いた行程表です。<PDF>

4.巡礼路の全体的な印象

(1)巡礼のルート
この道はロヨラLoyolaからマンレサManresaへ向かうのが正規なルートですが逆ルートで歩いても巡礼証明書は貰えます。バスクの山越えは逆方向の方が標高差は少なく楽と思われます。
(2)アルベルゲ、宿泊設備が少ない
 サラゴサZaragozaからログローニョLogoroñoの区間はアルベルゲがありましたがその他の区間ではアルベルゲは少なく、サラゴサZaragozaからフラガFragaの区間は適当な距離間にホスタル等の宿泊先も少ない事情もあります。
(3)区間距離が長い箇所がある
トゥデラTudelaからガジュルGallur及びセルベラCerveraからイグアラーダIgualadaは約40Kmの区間(Etapa)であり、その他も30Kmを越えるところがあります。これらの区間は2日の行程にして歩くことが望ましいと思います。またバスが並行して通っていますので利用も可能です。
(4)荒地と広大なブドウ畑の巡礼路
 リオハ州内は広大なブドウ畑が広がりリンゴ畑等の果樹園も多く肥沃な土壌であることを思われますがアラゴン州では農地にも利用されていない荒地が多く対照的な土地柄でした。
(5)道標は完備されています。
 近年、イグナチオ・ロヨラの道Camino Ignacianoのマークと赤い矢印が道標で整備されています。
ログローニョLogoroñoからモンセラットMontserratの区間はエブロの道Camino del Ebroとして従来の黄色い矢印が反対向きになっており、特に迷うところはありませんでした。 バスクの区間はハイキングルートのGR120の表示があります。

Camino Ignacianoの道標 ハイキングルート(GR)のと併記

5. ガイドブック

下記のサイトで概要、行程及び宿泊等が紹介されています。
Camino Ignaciano
イグナチオ・ロヨラの道Camino Ignacianoの日本で購入可能なガイドブックは下記です。
(随時、改定されていますので最新版にご注意下さい。)

   書名:Guide to the Camino Ignaciano(英語版)
著者:Jose Luis Iriberri、 Chris Lowney
出版社:Cluny Media; 2nd版 (2018/8/7)
ISBN: 978-1944418731
価格 :¥2.887-
(スペイン語版もあります。)

書名:On the Ignatian Way: A Pilgrimage in the Footsteps of Saint Ignatius of Loyola(英語版)
著者:Jose Luis Iriberri、他
出版社:Ignatius Pr (2018/3/15)
ISBN: 978-1621641469
価格 :¥2.925-
(Kindle版もあります。)