1.  銀の道  Via de la Plata

銀の道Via de la Plataは古代ローマ時代からスペイン北部のヒホンGijónから地中海岸のカディスCadizまでを結ぶ交易ルートであった道です。現在のサンティアゴ巡礼路はセビージャSevillaを起点としてフランス人の道Camino Francésの中継都市であるアストルガAstorgaまで又はサモラZamoraの北のグランハ・デ・モレルエラGranja de Moreruelaからサナブレスの道Camino Sanabresを経由してサンティアゴ・デ・コンポステーラSantiago de Compostelaまで歩かれています。

途中を経由する主要都市としては、メリダMerida、カセレスCaceres及びサラマンカSalamanca等があり、カセレス北部には銀の道Via de la Plataの中心的なカパラ遺跡Arco de Caparraがあってローマ時代からの道(Calzada Romana)や橋等も一部に残っています。セビージャSevillaからアストルガAstorgaまでの標高は200~800m程度でフランス人の道Camino Francesのピレーネー山脈、セブレイロ峠O’ Cebreiroの様な大きな標高差のアップダウンはありませんが、アルデアヌエバ・デル・カミーノAldeanueba del Caminoからサラマンカ間はローマ時代からの温泉地もある山間部です。

サナブレスの道Camino Sanabresを経由する区間ではオーレンセOurenseが主要な都市となっていますが、途中のモンブエイMombueyからオーレンセOurense間は山岳地帯(最高標高:Padrneo 1,329m)でアップダウンの大きい区間です。巡礼路はカスティージャ・レオンCastilla y León州からカンダ峠A Candaを越えてガリシアGalicia州へ入りますが山岳地帯の為雨量も多く森林が豊富です。 グランハ・デ・モレルエラGranja de Moreruelaからサンティアゴ・デ・コンポステーラSantiago de Compostelaまでは13Etapa(区間)で373.3kmありますが、30kmを越える区間が多く、アルベルゲも少なくかつ収容人員も少ない状況となっています。オーレンセOurenseはサンティアゴ・デ・コンポステーラSantiago de Compostelaまでが約115kmであることから、ここを出発地とする巡礼者が多くいます。

セビージャSevillaからフランス人の道Camino Francésまたはサナブレスの道Camino Sanabresを経由でサンティアゴ・デ・コンポステーラSantiago de Compostelaまではいずれも約1,000Kmありスペイン国内では最長の巡礼路であり南北の緯度差が有る事から気温や天候の差違も大きく、出発地のアンダルシアは春・夏は高温で巡礼には厳しい季節です。

2.  巡礼路の概要 Via de la Plata

(1)セビージャSevillaからメリダMerída
銀の道Via de la PlataはアンダルシアAndalcia州の州都セビージャSevillaのセビージャ大聖堂が出発点となります。クレデンシャルにスタンプを貰いグアダルキビル川に架かる橋を渡って長い巡礼の旅が始まります。巡礼路はあまりアップダウンの無い農場や原野を通りますが農場に流れる川に橋が無い個所もあり何度か靴を脱いで歩く事になります。雨季には渡渉が出来ず国道を迂回する場合もありますのでアルベルゲ等で状況を確認して下さい。
カスティージャブランコ・デ・ロス・アロージョスCastillablanco de los Arroyosからアルマデン・デ・ラ・プラタAlmaden de la Plata間は途中にバルBarやレストラン等も無い個所もあり昼食と水の持参が必要です。
リアル・デ・ラ・ハラEl Real de la Jaraの村を出るとエストレマドゥーラEstremaura州になり巡礼路の道標が変わります。サフラZafraはこの区間で比較的大きな町でイスラムの雰囲気の残る城や建物もあり一息つける中継点です。
セビージャSevillaを出発して約10日でグアディアナ川に架かる石のローマ橋(Puente Romano)を渡ってメリダMerídaに着きます。メリダMerídaはエストレマドゥーラEstremaura州の州都でローマ時代から繁栄した都市でローマ劇場(Teatro romano)や水道橋等多くの遺跡が残されていますので見学を兼ねて一日休養をお勧めします。

広大な銀の道を歩く
メリダMerídaのローマ橋

(2)メリダMerídaからサラマンカSalamanca
メリダMerídaからサラマンカSalamanca間はややアップダウンがある巡礼路になり一日の行程も30Kmを超える区間があるので宿泊するアルベルゲを考慮して行程を考える事が必要です。アルクエスカールAlcuescar付近から巡礼路にローマ時代の道標(Miliario)がありかつて交易路であった事が伺えます。
カセレスCáceresは古い城壁にかこまれた町で春の聖週間(セマナサンタ)の祭りは盛大で旧市街は世界遺産に登録されています。ダム湖(El embalse de Alcántara)を過ぎるとやがてカパラ遺跡(Arco de Caparra)に着きます。遺跡には石造りの門が建ちこの巡礼路のハイライトとなる地点です。巡礼路沿いに宿泊場所がない為オリバ・デ・プラセンシアOliva de Plasenciaのアルベルゲまで迂回するかか巡礼路先の国道沿いのホスタル等を利用します。
カパラ遺跡を過ぎるとバニョス・デ・モンテマヨールBaños de Montemayor の温泉地があります。多くの観光客も訪れ観光地になっています。バニョス・デ・モンテマヨールBaños de Montemayor を過ぎれば4,5日程度でサラマンカSalamancaですが途中のフエンテローベ・デ・サルバティエラFuenterreobe de Salvatierraのアルベルゲは是非泊まってみたい宿です。
サラマンカSalamancaは銀の道Via de la Plataで最大の都市でスペイン最古のサラマンカ大学やサラマンカ大聖堂がありここも世界遺産に登録されています。街中には多くの学生が見られフェリペ5世が建設したマヨール広場はマドリードMadridのマヨール広場と匹敵する広さでゆっくり休憩する事が出来ます。
マドリードMadridから高速鉄道(AVE)で2時間半程度でありここで一旦巡礼を中断する巡礼者も多くいます。

カパラ遺跡(Arco de Caparra)
サラマンカ大聖堂

(3)サラマンカSalamancaからアストルガAstorga
銀の道Via de la Plataは巡礼路に沿って国道N-630が通り高速道路A-66も建設されたため。サラマンカSalamancaからこれらの建設工事でかつての巡礼路が破壊されている個所があり残念な気がします。
サモラZmoraの近くからかつてアストルガAstorgaまでの廃線跡を見ることが出来ます。サモラZmoraはカスティーリャ・イ・レオンCastilla y León州で市内はイベリア半島の主要なドゥエロ川沿いに位置しています。サナブレスの道Camino Sanabrésを経由してサンティアゴへ向かう場合はオウレンセOurenseまで大きな街はありません。
巡礼路はグランハ・デ・モレルエラGranja de Moreruelaでサナブレスの道Camino Sanabrésを分岐して北へ向かいベナベンテBenabenteへ向かいますがここはメセタ台地でアップダウンの無い道です。ベナベンテBenabenteからバニェーサLa Bañezaを通過するとやや高台からアストルガAstorgaの町を見下ろすことが出来ます。

ドゥエロ川沿いのサモラZmora
巡礼路沿いの標識



銀の道の地図

出展:Gronze.com via de la Plata “https://www.gronze.com/via-plata”

Google Mapによる地図は下記が便利です。

Mapas del Camino Via de la Plata

サナブレスの道 Camino Sanabrés

(1)グランハ・デ・モレルエラGranja de MoreruelaからオウレンセOurense
グランハ・デ・モレルエラGranja de MoreruelaからタバラTabara、サンタ・マルタ・デ・テラSanta Marta de Teraの町を経ると巡礼路はダム湖等を見ながら次第に山間部になっていきます。やがて前方にプエブラ・デ・サナブレスPuebra de Sanabésの城壁が見えてきます。この村はテラ川とカストロ川の合流点である戦略的な場所で町を守る要塞がまだ綺麗に保管されています。
プエブラ・デ・サナブレスPuebra de Sanabésから本格的な山岳ルートです。標高差約400mを登りルビアンLubíanまで一旦下りますがカンダ峠A CandaでガリシアGalicia州になります。グディーニャA Gudiña からラサLazaまでは標高1,000m程度の高原である事から降雪も早くベリンVerín経由でオウレンセOurenseへ向かうことも考慮が必要です。
ラサLazaまで下るとシュンキエラ・デ・アンビアXunquiera de Ambíaを経てオウレンセOurenseへ至ります。
オウレンセOurenseはガリシアGalicia州で3番目に大きな町でオーレンセ大聖堂がありますが郊外に温泉もありサンティアゴ到着後にここで休養する日本人巡礼者もいます。ここからサンティアゴまで約115kmであることからアルベルゲには明日から出発する巡礼者が泊まっています。

プエブラ・デ・サナブレスPuebra de Sanabés
ラサLazaへ向かう

(2)オウレンセOurenseからサンティアゴ・デ・コンポステーラSantiago de Compostela
オウレンセOurenseはやや盆地の町で巡礼路がやや登って行くと町全体を見下ろすことが出来ます。巡礼路はセアCeaからオセイラOseira修道院を経由するルートと分岐してカストロ・ドゾンCastro Doónを経てエスタシオン・デ・ラリンEstacíon de Lalínへ向かいますが、地名の通りスペイン鉄道(Renfe)の駅があり近くを高速鉄道(Ave)が通る予定です。
シデージャSidellaの町を抜ければサンティアゴまで2日程度で長い巡礼路の旅を終えることが出来ます。

オウレンセOurenseの大聖堂
スペイン国鉄の新旧の橋(Puente Ulla)

Camino Sanabresの高低図


出展:Camino Foram https://mapacaminosantiago.es/caminosanabres/”